これまで約3000年前の冠ヶ岳の噴火が、箱根火山の直近の噴火と考えられてきましたが、以前から火山噴火に伴うと考えられるくぼみが神山や大涌谷周辺で複数確認されていて、冠ヶ岳の噴火後も水蒸気爆発があったのではないかと指摘されていました。
2006年の大涌谷周辺の調査で、冠ヶ岳の噴火以降に堆積した箱根火山のものと考えられる火山性堆積層が5層確認されました。
同じ地層に堆積している富士山の火山灰や神津島天上山の火山性堆積層との地層の上下関係の確認や、地層に含まれている木片などの放射性炭素年代測定から、5回の噴火は約2800年前と約2000年前,そして12世紀後半から13世紀頃の比較的短期間に、3回の噴火があったものと推定されました。
火山性堆積層の堆積状況から、約2800年前と約2000年前の噴火は、 神山から北東方面に伸びる尾根付近に噴火口があったものと考えられ、現在も噴火口跡と考えられるくぼみが残っています。
ともにマグマ本体の活動は伴わない水蒸気爆発であったと考えられており、噴火直後には土石流が発生し、2000年前の噴火では、噴火に伴って火砕サージが発生しました。
12世紀後半から13世紀にかけての3回の噴火は、大涌谷周辺が噴火口であったと考えらています。
どちらも水蒸気爆発で、大涌谷周辺の半径数百メートルの範囲で火山性堆積層が検出されるだけの、小規模な噴火でした。
12世紀後半から13世紀(約800年前)にかけての3回の噴火を一つの噴火活動として数えると、2800年前、2000年前、800年前とその間隔は800年、1200年で、現在は前の噴火から800年にあたります。
こうして箱根山の噴火を歴史的に捉えるてみると、現在の活発な噴気活動は、過度に恐れてはいけないけれど、注意して見守るべき状況なのでしょう。